はじめに
皆さん、こんにちは!Medi Faceの吉富智歳です!
今回は北見にある「愛し野クリニック」の院長を務めていらっしゃる、岡本先生にインタビューさせていただきました!

岡本先生のご経歴
1985年 東京大学医学部卒業
1985年 東京大学医学部附属病院第三内科・第四内科研修
1986年 自治医科大学附属病院呼吸器・循環器・内分泌代謝内科研修
1987年 東京大学医学部第四内科医員
1988年 順天堂大学内科研究生
1991年 東京大学医学部第四内科助手
1992年 ハーバード大学医学部博士研究員
1995年 ハーバード大学医学部大学講師(インストラクター)
1997年 クリーブランドクリニック財団ラーナー研究所助教授
1998年 オハイオ州立大学助教授兼任
1999年 理化学研究所脳科学研究センターチームリーダー就任
2001年 東京大学医学部医学博士
2001年 医療法人ケイ・アイオホーツク海病院内科
2004年 医療法人ケイ・アイオホーツク海病院院長
2009年 クリニック開院
岡本先生は、東大医学部を卒業後、東大病院で内科の臨床医として働き、理化学研究所で研究をされていた、とてもすごい先生です!
現在は北見で家庭医としてご活躍されています。
家庭医や研究に興味のある方は、この記事を呼んで少しでも参考にしていただけたら幸いです。
それでは、さっそくインタビューに移っていきましょう!
岡本先生インタビュー
吉富
先生のご専門を教えてください。
岡本先生
私は患者さんが「インシュリンを痛いから打ちたくない。」というので、注射を飲み薬に変えるということを世界で初めて論文にしました。だから僕は糖尿病の専門医と言えると思いますが、糖尿病に心の問題が存在すると気づいて心療内科もやっていますので、何科の医師かという質問は僕にはこたえるのが難しいです(笑)。正確には私は家庭医です。日本では医師に専門性を求められますが、海外ではそんなことありません。例えば海外ではGP(general practitioner:一般開業医)が導入されていて、そもそも体制が異なります。GPは内科や皮膚科、精神科などある程度広い範囲を見ることができ、何か困った時に全ての質問に答えてくれます。例えばCOVID-19もGPが診ていたため、9割の感染者が入院せずに済みました。
吉富
市民一人一人に専属の先生がいて、その先生があらゆる面で治療やケアをしてくれるのですね。
岡本先生
その通り。その人のことを様々な医学的分野から見ることができるということです。日本の体制はフリーアクセスを売りにしていますが、患者さんは近所の評判やネット上の口コミなど不確定な情報を頼りに様々な先生を転々としているのが現状です。でもそれはとても無駄が多いと思いませんか?
吉富
そうですね。一般の人はフリーアクセスといわれても不確定な情報から先生を選ばざるを得ない一方で、海外ではGPが専門の先生を選んでくれる、ということですか?
岡本先生
そうです。海外には自分のことをほぼ全部わかってくれるGPがいます。コロナ禍であっても、今は入院するのではなく、家にいて良いのだと、普段から近くで見てくれてるGPに言われれば、患者さんも納得のうえで対応ができますよね。日本ではベッドがたくさんあるのに病床が逼迫であるという状態が起きています。そういうことが起きるのは、日本のこうした体制に原因があると言われています。
吉富
GPがいることで患者さんを全人的に診ることができるんですね。患者さんにとってとても安心なシステムです。
先ほど紹介していただいたGPのシステムを日本で作るにはどうしたらいいでしょう。
岡本先生
日本はフリーアクセスという言葉のもとに出来高制というのを取ってるので、なかなか厳しいと思います。GPにすると診た人数でやっていくってことだから、いわゆる稼ぎってものは平均化してしまいます。医者という職業は、もっと奉仕の職業ととらえられたほうがいいですね。一方で、海外ではどこの病院に行ったらいいのかを毎度GPに問い合わせなければなりませんが、日本のフリーアクセスというシステムには、例えばあなたが九州に旅行したとしても、どこの病院にも行けるというメリットがあります。
吉富
GPにもメリット・デメリットがありますね。
先生は初めから医師になると決めていらっしゃいましたか?
岡本先生
紆余曲折がありましたね。元々親が京都で開業していました。おじいちゃんとかおばあちゃんとかやってきて、ちょっとお話しして、色々と医療行為をして、それで街の役に立てるような感じが好きだったんです。けれど大学に行って研修などをしてしまうと、寂しいことに実際にいらっしゃる患者さんとはだんだん離れていってしまいます。大学入学時は分子生物学に興味がありました。自分であちこちに行っては、基礎研究をやるということをしているうちに、糖尿病の研究が面白いと思ったんです。というのもその経路を研究することが世界の最潮流だったんです(笑)。その研究に魅せられてよしじゃあ研究をやろうと意気込んでいたのですが、研修先の自治医大で、臨床の神様のような方に出会いました。東京女子大の救命救急を創られた方で、自分の業務室に赤ボタンを取り付けて、病棟で異常があったらその赤ボタンを見て自ら駆けつけるという素晴らしい先生です。それはもうその場にいる全員がその先生に魅せられてしまうんです(笑)。日本の循環器内科を引っ張っている先生で、僕もたくさん影響を受けました。そんな中、僕の初めて診た患者さんが肺がんを患い危険な状態だったので、今では禁止行為ですが、横に寝ていたんです。けれど挿管がうまくできず、残念ながら亡くなってしまいました。その時やはり研究をしなければ患者さんを救えないんだなと思ったんです。臨床をやっていると、いつかこの境地に行き着くものなんですよ。ですがこの患者さんの話を東大のカンファレンスですると、悲しいことに「お前はよくやったよ。」で終わっちゃうことが殆どです。ですが、もし僕がこの症例を、MGH(マサチューセッツ医科大学)のカンファレンスに持ってったら、とても優秀な先生がやって来て、「これこうだよね、これやったらできたんじゃないの?」と打開策を出したかもしれないとどうしても思ってしまうんです。仕方がかかったであきらめきれないからこそ、研究が非常に重要だと感じています。
吉富
先生が臨床をされるうえで大切にされていることを教えてください。
岡本先生
患者さんを診た瞬間、今日は帰していいかどうかを正確に判断できるか否かは、知識と経験にかかっています。例えばくも膜下出血や心筋梗塞を患った患者さんをその場で帰してしまうと終わりです。ちょっとでも自分の診断が間違ってたかもしれないとかんじたら、勇気をもって大きい病院の先生に頼みこまなければなりません。目で見て、患者さんの容態について直感を働かせて、これはなんとしてでも大きな病院に送り込まなきゃダメと思えるかどうかは、ものすごく重要なポイント。そして家庭医として患者さんの普段の生活に密着できているかどうかも重要です。頻繁に会っていると患者さんの容態がいつも通りか異常かが瞬時にわかります。診察を通して患者さんと触れ合うにつれて、患者さんの生活の裏側というかクリニックでは見えない患者さんの本来の姿が見えてきて、探偵をしているみたいで楽しいですね。患者さんが良く思うかどうかは別ですが(笑)。大切な患者さんを正しく診察するには、クリニックでは見えない患者さんのバックグラウンドというか、本来の姿を見る必要があります。そのためには、ニューイングランドやランセットを読んでも準備しておかなければなりません。
吉富
お医者さんになることは大変だなと改めて思ってしまいました(笑)。
岡本先生
要するに、あなたがこれを聞いて、頭の幸せな回路が動くかどうかなんです。人間は本当にやりたいこと以外はできません。患者さんに奉仕することが自分の幸せにつながるかどうかですね。
吉富
本格的に医療に携わる前に何かしてたことはありますか?
岡本先生
僕はやはり研究がしたかったんです。なぜか理由はよくわかんないのですが、東大の医学部の勉強会に出たりしていました。ポリクリで小児科を回った時に1型糖尿病で死にかけた患者さんを救ったという話を聞いて、どうしてももう一回見たくなって、先生にもう一度話を聞かせてもらえるように電話でお願いをしたこともありました。僕はやろうと思ったら止まらない人でしたね(笑)。また、海の外を見てみたくて、大学一年生のときにアメリカをグレイハンドバスに乗って30日間で1周しました。その次の年、ヨーロッパを45日ぐらいかけて周りました。とにかく世界を見てみたかったんです。それから同時通訳の学校に通って、一生懸命アルバイトして稼いでいましたね。
吉富
やはり海外と、日本の研究事情は全く異なりますか?
岡本先生
全く違います。海外は人種と関係なく、本当に優秀だったら上に上がって行けますが、頓挫したらすぐクビになってしまいます。
吉富
実力主義ですね。例えば大学病院の医局員として働いている、海外に行くということは可能なのでしょうか?
岡本先生
もちろん可能です。パッションさえあれば何でもできますよ。大学病院の傘の下でやっていこうと思ったら、その中でやっていくのが精神的に楽です。だけど、あなたがそれで満足するかどうかはまた別の問題です。自分で調べているうちに、「こんな面白い発表があるんだな。」と感じる時が来るかもしれません。気に入った研究を見つけたら、その研究をしている人のところに行って話を聞き、自分に合っていると思ったら飛び込んでみてください。そして、何でもいいから質問すること。これはとても重要なことです。日本の学会では偉い人しか質問しませんが、僕は1番前の席に座って必ず質問します(笑)。質問をすることは躊躇されがちですが、カラオケで下手な人が歌った後は、次の人が歌いやすくなるのと同じ様に、下手な質問したらしたで、その場が盛り上がってとても楽しものなんです(笑)。質問することでその人から聞いてなかったことを引き出せるし、普段の医療行為にとても役立ちます。とにかくできるだけたくさんの学会に出て、いろいろな人と話をすることで、様々なルートが見えてきます。これまでにも、質問を沢山したことで僕のことを覚えてくれた先生に、僕の患者さんを見てもらうといったことが何度もありました。今でも交流があるって大事なことです。僕がやりたいことは、患者さんを送る相手を見つけることです。誰々先生の紹介なんていい加減で、患者さんにとって一番良い先生なんて誰にも分りません。自分の目で見て、この先生なら任せられると感じた先生を紹介しない限り、患者さんがハッピーになることはありません。患者さんのためって結局そういうことだと思います。
吉富
そこまで患者さんに親身に寄り添っていると、休日も気が休まらないのではないですか?
岡本先生
そうですね(笑)。ここ三・四年は朝から20人くらいの患者さんが血圧や脈拍の数値を報告してきてくれます。四時ごろから連絡くれる人もいますね(笑)。体力も重要だから休日にハイキングにも行ったりしているけれど、常に患者さんのことが気になっていますね(笑)。
今あなたは医学生ですが、運動をしていますか?
吉富
私は運動がとても好きで、バドミントン部に入部しています。
岡本先生
とても良いことです。臨床は特に体力勝負ですから、絶対に運動してる人が有利ですね。
吉富
私は少し心配なことがあって。私はロングスリーパーなのですが、医師としてやっていけますか?(笑)
岡本先生
関係ありません。本当に医者になった途端に起きられます。なぜでしょうね?(笑)
吉富
最後に学生へ一言お願いします。
岡本先生
これから紆余曲折をへて最終的に自分がやりたいものに出会うと思いますが、僕は学生さんに、とにかくいろいろな人にぶつかって、いろんな意見を聞いて、これなら波長が合いそうだと思えるものを自分なりに見つけてほしいと思っています。ずれていてもいいから何か強いパッションを持っていてほしい。そして、それを持ちながら進んでいくことで、最終的に本当に自分がしたかったことに出会えると思います。でもこんなことは色んな人にぶつかって行かなければ、絶対できないことだと思います。僕はハーバードの教授に研究費を出してくれるようにお願いしたら、「お前の研究は腐ってるからダメだ。」と言われました。でも日本帰ってきてダメダメ言ってるだけじゃそれこそだめだと思って、もう一回アメリカに帰って3日でまた書き上げて、教授のところに持って行きました。それでも見てくれなかったので、ずっと教授の教室の前に3時間位立って待っていました。そして教授が出てきたところで論文を見せたら、「今回のはよくかけている。」と言って、研究費を出してくれたんです。やっぱり大事なのは強いパッションです。
吉富
本日はお忙しい中本当にありがとうございました。
岡本先生
ありがとうございました。



