北海道大野記念病院副院長 山下武廣先生インタビュー【前編】

みなさんこんにちは! Medi Faceマガジンチームの吉富智歳です!

今回は、北海道大野記念病院の副院長を務めていらっしゃる、

循環器内科医の山下武廣(たけひろ)先生にインタビューさせていただきました。

山下先生のご経歴

〇現職
・社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院
・副院長 兼 心臓血管センター長

〇出身大学
旭川医科大学卒業(昭和62年)
北海道大学大学院修了(平成4年)

〇職歴
・旭川医科大学卒業、北海道大学医学部付属病院(昭和62年)
・伊達赤十字病院 内科(昭和63年)
・釧路市医師会病院 循環器内科(昭和64年)
・北海道大学医学部附属病院 循環器内科 北海道大学医学部
・北海道大学 第2薬理学講座(平成2年)
・札幌南逓信病院 第2内科(平成3年)
・砂川市立病院 循環器内科 北海道大学大学院修了(平成4年)
・函館中央病院 循環器内科医長(平成5年)
・米国カリフォルニア大学アーバイン校メディカルセンター
・心臓部門 客員研究員(平成10年)
・イタリアミラノコロンブス病院
・心臓カテーテル室フェロー(平成11年)
・北見赤十字病院 循環器内科 部長(平成12年)
・北海道大野病院 循環器内科 主任医長(平成14年)
・同院 循環器内科 主任部長(平成17年)
・同院 副院長に就任(平成19年)

現在は北海道大野記念病院の副院長をされている山下先生ですが、

過去にたくさんの病院でご活躍をされていた先生なのです!

そんな山下先生が学生時代に何をされていたのか、

今の専攻に決めたきっかけとは何か、

普段、どのようなお仕事をされているかなど、

医学生である私たちにとって、とても参考になるお話を伺うことができました。

将来医師になることを志している学生の方や、一般の方にも楽しめる内容になっていると思うので、ぜひ最後まで読んでいただけたら幸いです。

今回のインタビュー記事は、以下の3つのパートに分けて作成しています。

前編:山下先生の医師人生の背景・経歴紹介

中編:副院長である山下先生の医師としての普段のお仕事とは?

後編:現在の医療について、山下先生のご意見

今回は前編の内容になります!ぜひ、お楽しみください。

先生はどのような経緯で医療従事者を志望したのか。

医師に限りませんが、将来の夢を目指す動機は人によって様々です。

循環器内科医としてご活躍されている山下先生は、どのような経緯で医療従事者を志望したのでしょうか…?


———— 先生はどのような経緯で医師になろうと思い立ったのですか?

山下先生:小学校1年生とか、ずいぶんと小さな時から医者になるって決めていました。別に親から言われていたわけでもなく、僕自身がお医者さんになりたいって言っていたらしくて(笑)、何かきっかけがあったわけでもなく、自然にそう思っていました。ずっと医師になることのみ目指していたので、無理だったら今頃どうしていたんだろう、という感じ(笑)

———— なるほど、小さい頃から医師を目指されていたのですね。高校時代はどのように過ごされていたのでしょうか?

山下先生:どのくらい勉強していたか具体的にはおぼえていないけど、ずっと順調に成績が良かったわけではないので、余裕で医学部に入れたというわけではなかったです。結構やばい時期もありました。

あまり成績が良くなかった時、高校の担任の先生に『君は本当に医学部に行くのか』って言われて、『なんとしてでも行きたいです』って。

この担任の先生がいい人だったので、自分の志望校を落とさせることもなく、受験を応援してくれました。『そうかわかった。ただ、今のままでは無理だから、もう少し頑張れよ』って。

高校の部活は剣道部だったんだけど、高校二年生でやめて、そこからは医学部に入るために猛勉強して、たまたま浪人せずに旭川医科大学に入ることができました。


幼い頃からずっと医師になることを目指し、その志を以て大学受験を乗り切ったという山下先生。

山下先生のお話を聞いて、潔白な志をずっと持ち続けることの大切さを実感できました。

現在の専攻にした理由

一般的に、医学部の6年間ではすべての診療科についての勉強をします。ある程度自分の専攻を絞り込んでから、2年間の初期研修で臨床現場を見て、研鑽を積んだ後で自分の専攻する診療科を決めます。

私も現在、医学部に通い医学の勉強をしていますが、どの科もとても魅力的に思えて、なかなかこの科を専攻したい!と決め切れません。

山下先生は、どのような経緯で循環器内科を専攻されたのでしょうか?


————山下先生は現在循環器内科を専攻とされていますが、その専攻を目指すことになったきっかけを教えてください。

山下先生:医学部に入りたてのころは、なんとなく小児科医を目指していました。しかし、病院実習で小児科を回った時、自分はこの仕事は向いていないな、ということを悟りました。

様々な診療科を見て回ったことで、自分は病態生理がはっきりと分かっている科が好きで、向いているということに気が付きました。そこでたどり着いた結論が、循環器内科だったわけです。

————ありがとうございます。具体的に循環器内科はどのような点で、病態生理がはっきりとしているのでしょうか?

山下先生:循環器内科では、例えば心筋梗塞の患者さんの心臓カテーテル手術などを行います。

これはとても病態がわかりやすくて、心電図を取ればどの冠動脈が閉塞しているかが分かるし、カテーテル治療で血栓を取り除き、冠動脈を拡張してやればしっかりと治るわけです。

そういった意味で、循環器内科は比較的わかりやすい病態の症例を見ることが多いのです。

また、循環器内科では、外科とは異なり低侵襲手術(手術に伴う出血や痛みが少ない手術)を行います。しかし、心筋梗塞や狭心症など、治療できる疾患はとても幅広いです。

そのため、低リスク高リターンな手術を行うことができます。

そのことも当時の私にとって、循環器内科が魅力的に映った理由の一つだと思います。


循環器内科の疾患は病態生理が分かりやすい、というのは、現在臨床医学を勉強している私にとってかなり納得ができるご意見でした。

他の診療科を勉強していると、どうしても理解しにくい部分が出てきます。

それに対して、循環器内科の病態はとても分かりやすいので、しっかりと解剖学や生理学を学べば納得できます。

他にも、

薬を処方して長期的なスパンで治療を進めていく他の内科とは異なり、手術などでより直接的な介入によって、短期的に治療していくことができる点

自分が行った治療結果が患者さんの病態にすぐに表れて、達成感がある点

など、たくさんの循環器内科の魅力を教えて頂きました!

実際の臨床現場の様子を見たわけではありませんが、循環器内科の魅力をたっぷり教えてもらって、

循環器内科、いいじゃん!

と、単純ながら思ってしまいました(笑)

少し本筋とはずれますが、循環器内科医としてお仕事をしていく上で、必要なことについても聞いてみました。


————先生のお話を聞いてみて、循環器内科についてもっと知りたくなりました!

循環器のお仕事はかなり体力が必要だという話を聞いたのですが、本当ですか?

山下先生:体力は必要だと思います。跳んだりはねたりするわけじゃないけど、集中力を維持するための体力が必要になります。趣味も兼ねていますが、体力を維持していくために毎週テニススクールに通っています。

循環器内科、甘くなかった(笑)


山下先生のご経歴とは?

冒頭にも書きましたが、山下先生はたくさんの職歴をお持ちの先生でしたよね。

〇職歴

・旭川医科大学卒業、北海道大学医学部付属病院(昭和62年)

・伊達赤十字病院 内科(昭和63年)

・釧路市医師会病院 循環器内科(昭和64年)

・北海道大学医学部附属病院 循環器内科 北海道大学医学部

・北海道大学 第2薬理学講座(平成2年)

・札幌南逓信病院 第2内科(平成3年)

・砂川市立病院 循環器内科 北海道大学大学院修了(平成4年)

・函館中央病院 循環器内科医長(平成5年)

・米国カリフォルニア大学アーバイン校メディカルセンター

・心臓部門 客員研究員(平成10年)

・イタリアミラノコロンブス病院

・心臓カテーテル室フェロー(平成11年)

・北見赤十字病院 循環器内科 部長(平成12年)

・北海道大野病院 循環器内科 主任医長(平成14年)

・同院 循環器科 主任部長(平成17年)

・同院 副院長に就任(平成19年)

改めて見てみると、すごい。。。

山下先生に限らず、たくさんの医療機関で医療に従事されている先生は数多くいらっしゃいます。

数多くある山下先生の経歴の中でも、ここでは

  • 〇北大病院での研修医時代
  • 〇卒後7年で就任された函館中央病院の循環器内科医長時代

上の2つの経歴について、詳しくお伺いすることにしました。


————北大病院での研修医時代はどのように過ごされていたのでしょうか?

山下先生:おそらく、僕が経験した35年前の研修医と、現在の研修医では全く異なる勤務体系になっていると思います。

当時はしっかりとした研修医システムがなく、卒後一年目から一人前の医師として働かなければいけませんでした。

生活の質が担保されていない上に、お給料も今の研修医ほどはもらえておらず、過酷な労働環境でした。

今は、しっかりとした研修医制度があり、生活の質やお給料も担保されて、いい時代になったなあとうらやましくなります(笑)

循環器内科医としては、卒後4年くらい、鳴かず飛ばずのあまり冴えない研修医時代を過ごしていました。自分はあまり器用な人間ではなく、パッと見てすぐにはできませんでした。そのため、研修医時代は循環器内科医として挫折を味わっていました。

————山下先生は卒後たった7年で函館中央病院の医長を務められていらっしゃいますが、どういった経緯で医長を務められたのでしょうか?

山下先生:医長になったのは本当にたまたまで、自分が赴任してすぐに、当時の医長が辞めてしまったんですよね。他に医長に適任な人もいなかったので、自分が医長を務めることになり、突如、函館中央病院の実質現場のトップになりました。

それをきっかけに、めちゃくちゃ循環器内科の勉強をし、研鑽を積みました。現場では自分が一番の責任者であり、自分がやらなければ他にできる人はいないわけですから。

道外の様々な病院に見学に行ったり、専門の先生に函館に来てもらい、最先端の技術を実地で教えてもらったりしました。

そこから、だんだんと循環器が面白くなっていき、どんどん勉強して腕を上げていきました。

また、医長という立場になったので、病院経営についてもその時にたくさん学びました。今思うと、その経験が北見や大野記念病院での病院経営にかなり活かされていると思います。


昔の研修医の待遇の話や、大野記念病院で学んだことについてのお話を聞くことができました…!

研修医の待遇が昔の時代よりもよくなっている、という話は私たち医学生にとって本当にありがたいです…!(最低限のQOLは確保したい)

函館でのお話もかなりタメになりました!函館に限りませんが、医師が不足している地域の病院では、若い先生がトップになることもよくあるそうです。

どう考えても大変そうではありますが、医師としての研鑽を積むにはもってこいの環境かもしれません!

留学のきっかけについて

山下先生のご経歴を見てみると、アメリカの病院とイタリアの病院でのご経歴が書かれてあります。

・米国カリフォルニア大学アーバイン校メディカルセンター

・イタリアミラノコロンブス病院

皆さんは、医師が留学する、というイメージはありますか?

大学の教授や研究医の先生は頻繁に留学に行っているイメージがありますが、

私は臨床医が留学に行くイメージがあまりありませんでした。

ここでは、山下先生の留学体験について、少し掘り下げていきたいと思います。


————山下先生が留学に行くことを決めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

山下先生:函館中央病院に勤めて3年半ほど経った時に、自分の循環器内科医としての成長に頭打ちを感じるようになりました。

その時は循環器内科の勉強が楽しく、向上心が高かった時期だったので、自分の技術が伸びないことに危機感を覚えていました。

そこで、海外留学をして、自分が今まで経験できなかった最先端の医療を学ぶことを決意しました。

ありがたいことに当時の教授がコネクションを作ってくれて、約2年間のアメリカ・イタリア留学に行くことができました。

————循環器内科医としての成長を求めて、留学したんですね。英語についてはどのように習得したのでしょうか?

山下先生:アメリカに行ってすぐ働くためには英語が大事だと思って、函館で勤務している間に、土日を利用してネイティブの先生にプライベートレッスンを受けていました。かなり自己投資をしていたと思います。おかげ様で、渡米してからすぐに仕事を頂くことができました。その結果、アメリカでのカテーテル関係の臨床の様子やアメリカの医療制度をたくさん知ることができて、循環器内科医として、医師として成長することができました。

ちなみに、将来海外で臨床医として働きたいのであれば、研修の時点で沖縄や横須賀にある米軍病院に勤めてみることをお勧めします。米軍病院では完全にアメリカ式の医療を行っていて、研修システムも優れたアメリカ式のものを採用しているそうです。

アメリカでは、より早くから優れた病院に入って、より早く専門医を獲得して、日々研鑽を重ねていくといった具合に、日本の研修システムよりもより競争意識が強いように思います。

そのため、日本で同じ期間研修するよりも三倍、四倍の密度で学ぶことができるのではないでしょうか?


山下先生の医療者としての向上心に感動しました。私もぜひ見習っていきたいと思います。

米軍病院に勤める、という発想はなかなかありませんでした。生半可な考えで行くのは危険そうですが、、、笑

最後に

ここまで記事を読んでくださった皆様、ありがとうございます!

前編では、山下先生の医師としての背景やご経歴について記事にしました。

特に医学生の方にとって、参考になる内容も多かったのではないでしょうか?

今回の記事の内容の他にも、興味深い内容のお話を聞くことができたので、

是非中編・後編もお楽しみください!

それでは!

投稿を作成しました 23

関連投稿

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。