マレーシア紀行 二つの自由 vol.2

vol.1ではクアラルンプール中心部滞在の様子を記述した。クアラルンプール郊外にも範囲を広げ、4日目にはペナンという北部の都市の様子を記述する。

3日目 ヒンドゥー教の聖地と若者のたまり場

めちゃくちゃ寝坊して、11時過ぎに起床。朝の列車が多い時間にクアラルンプール郊外にあるBatu cavesに向かう予定だったが、日中は中距離の列車の本数は少ない。とりあえずKLセントラルまで行き、駅ビルのレストラン街で初めてチキンライス(海南鶏飯)を食べた。320円とは思えないクオリティ。ご飯の味が適度に薄いため、肉と合う。

Batu caves

12:45の列車でBatuへ。中距離以上は券売機ではなく窓口で購入するため、昨日と同様にトークンを求めたらなぜかICカードを渡された。どうやらこちらの方が往復で乗る場合安いらしい。お金を持っていなさそうにしている為か、昨日からレストランでも、安い方のプランを勧めてきて下さるのがありがたい。列車は対面の席と普通の席が半々くらいで、日本のローカル鉄道の雰囲気そのままである。ただし窓の3割に亀裂が入っていて、景色がよく見えない。およそ40分で到着。灼熱。早起きしなかったことを後悔した。

Batu cavesはマレーシア郊外の町で、ヒンドゥー教の重要な寺院がある。世界最大のスカンダ神像と洞窟(Caves)の中に建立された寺院が目玉である。境内に入ると象をモチーフにした様々な神像があったが、金色のスカンダ神像を見た瞬間の驚きは東大寺の大仏に通じるものがあった。地元の人と観光客が1:1くらいで、平日にも関わらずにぎわっている。洞窟内部まで、スカンダ神像の脇の272段の長い長い階段を登る。境内に沢山いるサルが、観光客が落としていったペットボトルの水を飲んでいた。頂上の洞窟の中はひんやりとしていて、神像と同じ視線から眺めるクアラルンプール市街の景色は圧巻だった。街を一望できる所に寺院が建築されている様子は興味深い。見学を終えて戻りの列車を待つが、もともと予定していた列車から40分ほど遅れて発車。時刻表はあることもない事もあるようで、駅員もあまりよくわかっていなかった。ついさっき神様を見ているのでこんなことでイライラしない。再びKLセントラルで降車し、次はモノレールに乗車。メトロより若干高めで、4駅で100円くらいである。

神の視点からクアラルンプールを眺望できる。
日本でいう牛丼チェーン、チキンライスショップ。300円。

Berjaya times square

モノレールでBerjaya times squareへ。高級ではないが大規模なショッピングモールという様相。入っているブランド価格帯と高校生のデートスポットであり遊園地があることを考えると、東京ドームシティの位置づけ。どこのショッピングモールも大差ないのだがここに来た目的は、マレーシア最強と称されるジェットコースターに乗るためである。

屋内遊園地に入園。入場料は外国人が2200円、マレーシア人が1500円。物価を考えればそこそこ贅沢な施設である。屋内遊園地なのでアトラクションが密集している。早速ジェットコースターに乗車。スピードも速いのだが、工事現場のような機械音と振動、たまに漂ってくる機械油の香り、緩々のベルトと半数の席が故障している車体が恐怖を増幅させる。最強(凶)たる所以。

B級感あふれる遊園地

Masjid jamek

2時間ほど遊んだ後、Masjidでモスクの見学。Masjid jamekとは人々が集う所という意味であり、マレー半島を流れる2本の川が合流する地点に位置している重要なエリアである。モスクが川の合流地点にあり、マレーシア人の心のよりどころになっている。その隣にある銀行ビルは、1980年頃まで国内1の高さを誇り、独立以来の経済的発展の象徴的な場所である。このように、歴史上重要な場所のすぐ近くに高層ビルを建築したりする感覚は日本人にないものだと感じる。どっちも重要ならまとめて建てた方がいい、ということらしい。ドミトリーに戻り、隣にあっていつもにぎわっていたインドカレー屋へ。ここで渡航後初のカトラリー無しに直面する。しかし、手で食べるナンカリーは絶品だった。五感で味わうというのはこういうことだと思う。これから日本でもナンカレーは手で食べようと決めた。そして、先にカバンからおしぼりを出した方がいいという教訓を得た。今もバックパックにはカレーのシミがついている。店主の妻が日本のドラマが好きらしく、単語でそこそこ日本語を知っていたので軽く話ができた。10語くらいはその国の言葉を勉強していった方が仲良くなりやすいと実感した。メニューの説明も中々にアバウトだったけどいい人たちだった。

川の合流点にあるモスク。奥に林立しているのが銀行ビル。
ナン(あるいはチャパティ)とカレーは別でオーダー。合わせて約400円。

4日目 世界遺産の街へ

7時に起床。誰も起きていない。基本的にドミトリーに泊まっている人は特に欧米人を中心に怠惰である。どこにも行かず一日中ベッドかソファーでスマホを弄んでいる。バックパックのサイズから推測するにかなりの長期滞在だと思われ、ドミトリーの部屋をさも自室のように下着で歩いていたりする。滞在費が安いので、お金が無くても時間さえあれば長期滞在できるのだろう。

9時の列車に乗るために早めにドミトリーをチェックアウト。鬼のスコールに絶望していると、ドミトリーのスタッフのおばさんがレインコートをくれた。優しい。スコールはすぐ止むものと思っていたが、普通に二時間くらい降っていた。隣のフルーツ屋でドリンクをリピート。オレンジとりんごと、おばあちゃん一押しの赤カブをミックスしてくれた。野菜のチョイスがちゃんとおばあちゃんだったがザラッとしていて美味しい。

Barber shop

KL centralに行くも、11時の列車が最速であることを告げられる。Googleの時刻表があてにならないので、駅の掲示板を見るしかない。中途半端に時間が余ってしまったので、散髪でもしようと思い近くの床屋をリサーチ。駅の裏にあるいかにも街の床屋さんといった店の雰囲気がよかったので、入店して髪型の希望を伝えるもまさかの英語が一言も通じない。でも店主はちょくちょく声をかけてくるので、その度に頷いたりちょっと首を傾げたりしたらすごい髪型になってしまった。550円なので何も言えない。

鏡の上のモデル写真が皮肉である。何を言っているかは分からなかったがいい人だった。

KL central→Butterworth

少し軽くなった頭でKLセントラルを発車。11:00発、4時間30分の長い列車の旅である。最高速度130キロで、350キロ先のButterworthまで北上する。車内はコンセントもついていて快適である。やや座席の幅が日本よりもゆったりしている。トイレで初めて洗浄ホースを使った。気持ちいいものの揺れる列車が難易度を倍増させる。Butterworthに到着。

Butterworthはペナン観光の起点で、ここからバスや中距離列車、そして今回利用したジョージタウン行きのフェリーが出ている。一回の乗船人数が100人ほどで、1時間に2〜3本出ている。乗客の3割くらいが観光客である。運賃は往復で40円ほど。採算が取れているのかは謎。対岸のジョージタウンには20分ほどで到着する短い航海だが、マラッカ海峡なのでしっかり揺れる。

ジョージタウンはイギリス統治時代の建築物を残しながらもマレー、インド、中国の建築が混在していて、その多様性と歴史的景観を評価されて街が世界遺産に指定されている。青空に白いイギリス風建築が空に映える。宿へ向かう途中で、いくつかの寺院やストリートを散策。メインのハーモニカストリートはプラカナン文化、リトルインディアとマレー建築が混在していて、自分がどこの国にいるのかわからなくなるほど視聴覚が混乱した。これまで歩いた街でも指折りにフォトジェニックな街である。

一泊800円の宿にチェックイン。手持ちの現金が少なかったので無料で見学できそうなモスクへ。モスク内の庭で子供たちがサッカーをしていた。靴を脱いで中を見学し、外に再び出ると靴がなくなっていた。さっきの子供たちにサッカーしようといわれたが、靴が無いので断った。無念。やむなく向かいの売店でサンダルを買って食事へ。外国人向けのビアホールで、ビール2杯とシュリンププレートで3000円という今回の旅で一番豪華な食事をした。雰囲気も相まって、ビール2杯でかなり酔った。タイガービールは薄いので飲みやすいが、ビール好きならハイネケンのほうが美味しい。

観光客向けのビアホール。イスラム教の国なのでアルコールを置いている店は少なく、高い。

散髪をするために希望の髪型を英語でメモしていったのだが、なんの役にも立たなかった。この旅で一番マレー語を勉強しなかったことを後悔した瞬間だった。帰国してからもしばらくはワックスを多めにつけて誤魔化していた。

今回は世界遺産の都市で「多様性」について記述した。次回はまた別の雰囲気の街でで感じたことと、1週間の旅の総括をするので引き続き読んでいただけると幸いである。


Medi Magazine編集部 佐藤

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